輪廻ノ空-新選組異聞-
「……自分がこんなに男だとは思わなかったな…」
打って変わって、ボソボソとした声と言葉。
「え?」
「あなたとまぐわいたくてたまりません」
「まぐわ…?」
少し体を離して、沖田さんの顔を覗き込む。
「そ、そんな言葉を復唱しては駄目です!!」
真っ赤だ。
「あなたは…こんなに気持ちが高ぶったら…その…」
「…!!」
さすがに分かった。
「お、同じ気持ち、です」
わたしも真っ赤になりながら答えた。
「良かった」
心底安心したような笑顔が向けられて。
何かすごく可愛いやら、でも自分も恥ずかしくなってきて、照れ笑い。
くすくすと、お互いに。
視線が合わさって…
自然と唇同士も合わさってた。
何度も何度も、離れたくなくて唇をついばむように吸いあって…。
余りに心地よくて。
でも心なしか沖田さんの唇が熱い気がして、聞こうとしたところで……
スパーン!と、障子が開いた。
わたしたちは弾かれたように離れて正座。
「てめぇらは!!!!」
正に鬼の形相で土方さんが立ってた。
「何を餓鬼どもの飯事みてぇにふざけてやがる!!!!」
弁えやがれ!と言ったところで一度口を閉じた土方さん。
「総司。てめぇは…あんなに女が苦手だったのに、壁を越えたら、一気に色気づいたか!」
ったく、しょうがねぇな、と言いながらも、何だか顔はちょっとゆるんでて。
でも沖田さんは真面目な顔に戻って仁王立ちの土方さんを見上げた。
「すみません、土方さん。こういう時だからこそ、別々の持ち場となって、名残を惜しんでいましたが、もう大丈夫です」
ハキハキと告げて。
「蘭丸。この加州清光、遠慮なく借りますね。ありがとう」
そう言って、清光を手にとった。