輪廻ノ空-新選組異聞-
長屋門まで見送りに出たわたしに、沖田さんは笑顔を向けて、小さく会釈をして出掛けて行った。


沖田さんが出て行ってすぐに、永倉さんや齋藤さん、原田さん、藤堂さん達も遊びに出掛けるような着流しで出て行って、近藤先生も出かけて行った。

式台にあがろうとしていたわたしに、もの凄くやる気満々な様子で「行ってくる!」とわたしの肩をバンバンと叩いて。懐からのぞいているのは、浅葱色の羽織。

何も、相談した訳でもなく、打ち合わせをした訳じゃないのに…、と思わず近藤先生の顔を見つめてしまった。

少し遅れて、土方さんが来た。

さっきの事が思い出されて気まずいけど、「お気をつけて」とサラッと言ってみた。

「なんだ、それだけか?」

総司にしたみたいに、姿が見えなくなるまで見送っちゃあくれねぇのか?と。前髪をガシガシと混ぜられた。

「殺しても死なさそうな人の心配する程暇じゃありませんから」

「言いやがる」

土方さんは楽しそうに笑って。

「あ…」

浅葱色の羽織りがのぞいていて、思わず声が出た。

土方さんはわたしの視線の先に気付いて「これか?」と指差した。

「沖田さんも近藤先生も持ってらっしゃいました」

「新選組という名を賜ってから初の大掛かりな出動になりそうだからな」

当然の以心伝心だろ、と驚いた様子も無く、土方さんは唇の片側を上げて、にやりと笑った。

そして一度空を見上げて。

「壬生ともなると祇園祭の喧騒も届かねぇな」

確かに、探索で出かける市中は鉾や山が出て賑わった様子だけど、洛外になる屯所あたりは静かだ。

「行ってくる」

土方さんはわたしに顔を向けた。

もう真顔だった。

「山南さん達を助けて、屯所を頼んだ」

「はい」

わたしも真顔で頷く。

「ご武運を祈ってます」

歩き出した背中に告げた。
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