輪廻ノ空-新選組異聞-
総長である山南さんが、屯所警備隊の中の責任者で、隊士の配置をしたけど、やっぱり少人数で、古高のいる土蔵と前川邸の入り口を固めるのに重点を置いて、あとは塀からの侵入を警戒すべく、縁側に数名を配置。
「土蔵と門の警備は交代で、後は気を抜かぬ程度に見回る」
と、指示を出してる山南さん自身がやつれて青白い顔だ。
具合が良くないから、屯所の留守番隊になった訳だけど…。
「サンナン総長、具合はいかがですか?」
縁側警備が一緒になったから聞いてみた。
「こんな季節だしな、気を付けてはいたのだが…何かに食中りでもしたのか、腹を下していて何も口にしていないのだよ」
「そうでしたか」
げっそりして見える理由が分かった。
「おっ、言っているそばから」
すまない、厠に行ってくる、と山南さんは変な足取りで小走りに去って、数分で戻ってきた。
「サンナン総長、水は飲んでいますか?」
「いや、水でも下りそうだからね」
「駄目ですよ!!どんどん体の水分を出してるのと同じですから、水を飲まないと脱水症状になります」
わたしの言葉に山南さんは目を丸くした。
「詳しいのだね」
「一応、父が医者ですので」
「ほぅ」
「とにかく、食べてもいないなら、白湯に砂糖と塩を少し溶かして飲んで下さい。体のミネラルが低下していると思いますから」
「み、みねら…る?」
はっ!
「お父上は蘭方医かね?」
うっ。しまった…。
ランポーイって何…!?
答えに詰まっていたら、山南さんは勝手に納得したみたいで。
「こんな世の中だ。どこで誰が洋学かぶれと聞いて襲ってくるか分からぬが、幕府も今は漢方だけでなく、蘭方に重きをおいて、松本良順というお医師をご典医にしているらしい。蘭方医だからといって隠す必要はないと思う」
ただ…近藤局長は苦手のようだから、余り言わない方がいいだろう、と、山南さんは語尾は駆け足になって、そのまま、また厠へと走って行った。