輪廻ノ空-新選組異聞-


無駄な血は流したくない。



だから、
未然に防げるよう探索してくれ。



坂本さんの願いは…

届かなかった。



足首で紐をくくる事で走りやすい草鞋を履いたわたしは、伊木さんとの任務以来、足を運ぶ事の少なくなってた池田屋に、猛ダッシュで向かって。

火事場のナントカじゃないけど、知らせを聞いてから程なくして到着したけど…


池田屋を遠巻きに囲む野次馬の人垣をかき分けてるわたしの耳には、聞いたこともないような怒号と、悲鳴、気合いのような声のこだまする池田屋の中の様子に青くなってた。


どこまでも通る、高く特徴のある沖田さんの気合いが聞こえない。


沖田さん…!?


「須藤、参りました!!」


叫びながら、外周りを固めていた原田さんの前に出る。


「中はいい!さっき土方隊が到着して助太刀に入ったからな!狭ぇから、増員しても味方に怪我人が増えるだげだ。平助達が負傷している!怪我人の確認と手当てを頼んだ!」

「はっ、承知!!」


平助って…、藤堂さんが負傷!?

愕然とした気持ちで、負傷者が運び出されてる所に駆けた。


そのわたしの耳に…


「総司!!しっかりしろ!!」


土方さんの叫び声。


頭から冷や水をかぶったような衝撃に打ちのめされて、声の方を振り返る勇気が凍りついた。
全身が心臓になったみたいに激しく鼓動が駆け足になって。

冷や汗がどっと出た。


「山崎!!それに蘭も来たのか!!総司を頼む!!」

俺ぁ、戻る!と土方さんは山崎さんに沖田さんを託した様子で駆け去る足音がした。
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