輪廻ノ空-新選組異聞-



「いい気味や。壬生狼なんかみんな、死んでしもうたらええのどす」


低く放たれた言葉。

伊木さんに恋をしていて、そしてわたしのせいでその人を失ってしまった紗英さんのまなざしは、沖田さんへと。

手にある銀色のものが、池田屋周囲を囲む捕り手の提灯の光りを浴びて煌めいた。

瞬間、わたしは、まだ意識がハッキリとはしてない沖田さんに被さってた。



ザクッ



背中に熱が奔った。

声も出なくて。

痛いとかよりも、起き上がれない沖田さんを狙った事に意識が行って、怒りが爆発した。

何をされるより、

家族がこんな目にあっても…

それ以上に許せない。


顔を上げて紗英さんを睨みつけた。


渾身の怒り。

「沖田さんを害するなら斬ります」

「うちは、あんたの正体叫んで相打ちや!!」

一歩も引かない紗英さん。

彼女も本気だった。

血のついた…

わたしの血のついた懐剣を振りかざしたのを見た瞬間、わたしは右手の手刀で懐剣を打ち落とし、左手で帯刀していた大刀の柄を掴んで抜き、柄尻で思い切り紗英さんのお腹を突いていた。

「うぅっ」


紗英さんは体を折って倒れ、そのまま気絶してしまった。


すかさず山崎さんが両手を後ろで縛り上げ、足も拘束すると生け捕りになっていて、あとから役所に連行される一団のところに放り込んだ。

鮮やかな早さ。

わたしは思わず見とれながら、ハッと自分の背中を思い出した。

右の肩胛骨の下あたりが痛かったような…

手をやるけど届かず。

「蘭丸…」

沖田さんが少し状況を把握したみたいな心配顔でわたしを呼んだ。

「鎖を着ていたから大丈夫です!!」

先っぽが刺さっただけ!と言いながら笑顔を向けたけど、沖田さんはガバッと起き上がった。

「刺さったんですね!?」


言うなりわたしの手を強引に引いた。

どこにこんな力がっていう強さで。

「わわっ」

わたしはバランスを崩して沖田さんの胸に倒れ込んだ。
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