輪廻ノ空-新選組異聞-
老いないように。

伸びない髪、

伸びない爪。

無かったように治る傷。


自分の時代に戻った時に、元のまま馴染めるようになってるらしい。


「不死身だな!」

なんて土方さんは笑ってたけど…。

自分の時代に戻る前提なのが、確定したみたいで…

わたしは凄く…

すごく…

すっごく

絶望した。



戻りたくないと…



本気で思ってるのを実感した。


沖田さんはもちろんだけど…

みんなの生き様がわたしを変えていく、そんな素晴らしい時代で「生きる」事を知ったわたしは…

もう二度と親に会えなくても、友達に会えなくても、死ぬまでここで生きたいと思ってる。



「大坂への出立まで、まだ刻限に余裕がありますよね?」

沖田さんに問われて、わたしは頷いた。

「壬生寺にでも行って、こども達と遊びませんか?」


暇があれば、壬生界隈のこども達と一緒になって目隠し鬼とか、かくれんぼとかの遊びに出掛けるのが、ずっと沖田さんの日課だったみたいで、わたしもずっと付き合ってる。


「そうですね!一汗かいてから出掛けるかな!」


すっかりこどもに慕われてる沖田さん。わたしにも懐いてくれ始めて、本当にかわいいこども達。


「沖田さんのこども…」

欲しかったな…、と。

つい漏れた。

老いない体、時が止まったままの体では許されない無理な願い。

それが、とてつもなく悲しくなった。

「蘭丸…」


幹部部屋に面した中庭の外れには、殆ど人は来ない。

沖田さんは、うつむくわたしを、そっと抱き締めてくれた。

「わたしには蘭ま…蘭子さんがいてくれるだけで充分幸せですよ。これ以上幸せになっちまったら罰が当たる」

「沖…総司さん…」

「それに、まだまだあなただけを…」

更に腕に力が籠もって。

わたしは頷いた。

「男にはわからない悲しみかも知れないけれど、でも今はあなたが一番大切ですから」

心の籠もった言葉が、わたしの急な悲しみを溶かしてくれた。
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