輪廻ノ空-新選組異聞-
沖田さんが待ってくれてる縁側に戻って。

束の間の平和と…幸せな時間を噛み締める。

「色々本音を言うとですね、山崎さんの代わりに私が一緒に行きたいとか…」

「実は沖田さんは嫉妬深いですか?」

思わず聞いたら、沖田さんは赤くなって。

「ひ、否定はしません。自分でも意外でしたが…」

更に、すみませんと謝るから、わたしは首を振った。

「嫉妬されて嬉しいですよ!されなかったら悲しい」

沖田さんは安心したみたいに笑みを浮かべて続けた。

「あなたが私の一番隊から監察方にいくのを反対するより寧ろ勧めたのは、暑い夏になっていくのに、暑さで寝乱れたあなたの白い足を、他の隊士が見ては困ると思ったからです」

その点、監察方の皆さんはあなたの事を知っていますからね。安心ですと言った沖田さんに、

「逆に知ってるから襲われたりして…」

「そっ、……そのような事をする方達ではありません」

と、怒りだす勢いで。

「冗談ですよ!冗談!」

おかしくて笑い出しちゃった。



「っち、おめぇらは気楽でいいな」

と、突然土方さんが現れた。

「あっ、お客さんの…カツアワ…ノカ…さん?はお帰りになったんですか?」

「勝安房守!勝海舟だ」

イラついて言う土方さんの言葉に、特に何の感想も興味もないから「ふ~ん」と返したら、土方さんは今度は逆に笑って。

「俺達以下の知名度か」

いいざまだぜ、と毒づいた。

「土方さん、安房守に何か言われたんですか?」

と、沖田さんがなだめる口調で聞いた。

「殺し合いはいけねぇ、池田屋でのご活躍で余計に浪士どもを刺激したからいけねぇ、って説教垂れやがった。会津から増援部隊が入るが、頑なに武士だから面倒起こさねぇようにだとよ」

「そりゃ…土方さんの気持ち逆撫でですね!安房守見事だなぁ」

沖田さんが笑って言うと、土方さんは益々不機嫌になった。

わたしも何となく土方さんの不機嫌がわかった。

自分でもわかってる事を他人に上から目線で説教されたら、余計に腹立って仕方ない。

好きで殺し合ってるわけじゃないし、会津藩士の融通のきかなさは池田屋の始末で散々わかった。
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