輪廻ノ空-新選組異聞-
「勝安房守はんの甥ごはん、見たか?」
大坂への道中、山崎さんが面白そうにニヤニヤしながら聞いてきた。
「お茶を持っていったので、紹介されましたよ?」
そうか!と、答えた山崎さんは、更に続けた。
「須藤にそっくりやったなぁ。まぁ、向こうの方がちぃと、上やったが」
「はぁっ!?」
びっくりして、わたしは思わず大声で聞き返してた。
「気付きませんでしたけど!似てましたか?」
一所懸命、累多と名乗ったお武家の顔を思い起こす。
「あ…。そういえば…」
どこかで会った事あるなって思ったんだった、と言ったら、山崎さんは笑いだして。
「そりゃ、そうやろ。毎日鏡見てんのやったら、毎日顔合せとるわけやしな?」
「はぁ…」
そうですね…と答えて。
言われてみると…そっくりだった気がしてきた…。
でも凄く武士っぽい青年だったし。そう、年上だよね。声は…若かったけど。異性でもあれだけ似てると面白い。また会ってみたいなぁ。
「まぁ、今後会う事はないやろけどな」
と、山崎さんは私の心の中の呟きを聞いたように言った。
「勝安房守の作った海軍操練所には弟子の坂本龍馬がおるしやな、坂本の友や言う縁で勝には、人斬り以蔵が絡んできとるらしいしな…思想も何もあったもんやないが、向こうもこっちに近づいてはこんやろ」
と早口に言われた言葉に仰天する。
「龍馬さんって、勝さんのお弟子さんなんですか…!」
幕府の人の弟子だったんだ、どういうこと?と混乱が始まる。
「尊王攘夷の過激派浪士の側かと思っていました」
「最初はそうやったみたいやけどな。勝さんに会うて、海の向こうを見つめる考え方に感銘を受けて、中途半端な位置におるみたいやな」
「ふぅん…」
変わった人だとは思ってたけど…。
そうだったんだ、と改めて坂本さんを思いだしてた。
池田屋事件で人命が失われてしまったこと…怒ってるかもな……。