輪廻ノ空-新選組異聞-
やらしい質問に、立ち去る足取りも乱暴になる。

「須藤、おめぇはうるさい!いちいち腹を立てるなんざ、まだまだ餓鬼だな」

副長室の障子が開いて、土方さんが怒り顔を出した。

「会津本陣に行くぞ。供をしろ」

「え?」

わたしは唐突な命令に驚いて、もうスタスタと玄関に向かって歩き出してる土方さんを走って追い掛けた。



「気になってんだろ、柴の事」
自分の歩調で先々行く土方さんは、息も乱さず話しかけてきた。

総司が、知らない間に親しくなっていたと妬いていたからな。と付け加える。

「またまた」

わたしは、からかい口調の土方さんと並びかけながら、少し睨んで。

「会津本陣にお使いに行って、ゴカロー様達に怖い思いをした後で、忘れ物を届けに来て下さった柴さんは、優しくて良い人で、ホッとしたんです」

「恩義のある藩に対してこんな事を言うのはいけねぇが…」

と、土方さんは顎を撫でながら続けた。

「確かに、会津のお歴々は皆、頭も口調もかたすぎる」

そんな中にあって、柴は少しやんわりしているな、と頷いて。

「真面目でかたいが、どこかちゃんと力が抜けてる。だからこそ今回も務めをきちっと果たしたんだ。初めての出動にも関わらずな」


土方さんは誉めた。


だから…


わたしはあの年表は間違いじゃないかと、希望を持った。


でも、そう甘くはなくて、土佐藩は浅田を武士にあるまじき不覚悟だと、切腹させてしまったのだった。


当然、土佐藩士達は怒った。
片方だけ罪を問われるなど、処分の片手落ちだって。

会津側も切腹させろと。

あり得ないよ!!

そっちが士道不覚悟だったから、いけないのにさ!!


土方さんのお供をして行った会津本陣。

事態がそんな風に急展開して、土方さんが柴さんには間違ったところはないと説明したのは無駄に終わりそうだった。
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