輪廻ノ空-新選組異聞-


大坂。


水都と言われていて、確かに海もあって、大きな川があって水の都。

京より涼しいかもだけど…でも暑い。

大川の船着場手前の河原でしゃがんで、ひたすら川の流れを見つめる。


時の流れは川の流れにたとえられるけど…。

会津藩と土佐藩というふたつの大きな藩の衝突が、柴さんの見事な切腹で避けられた。

柴さんの人生は川の流れに呑まれただけなのかな?

それとも、ちゃんとその死は波紋を作って流れに広がって、日本の時の流れに影響を与えたかな。

与えたよね。

大きな流れでは目立たない、小さな魚がひと跳ねしたぐらいかも知れないけど、でも大きな役割を柴さんは果たしたよ!

うん!

と、頭の中の独り言を完結させかけた瞬間、


グイッと肩を抱かれ、バランスを崩して尻餅をついた。


「うわわっ」


思わず相手の男の顔をグーで殴ってた。

「いだぃっ!」

悲鳴が上がる。

「どういて、そがいに乱暴ながじゃ」

「坂も…んぐっ」

手で口を塞がれて更にバランスを崩して河原に倒れこんじゃったよっ。

「梅さんじゃ。才谷梅太郎」

「どうでもいい!」

驚いて当然だろっ!! と、手を払いのけて叫んだ。

「ったく…泥だらけだよ」

言いながら着物を見下ろしてはっとした。

おなごの格好だった…!
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