輪廻ノ空-新選組異聞-
「武家姿や町人姿でもおのこやったら、怪しまれるさかいに、悪いがおなごの姿になってくれへんか」

と、山崎さんに言われて、着物を改めて探索に入ったんだ。

続々と長州の兵士が集まってきていて、ピリピリした空気。だからおなごの姿なんだ。

で、余りに物々しい空気と、気を張ってる疲れで河原に降りてきて休憩してた。

そしたらこれだよ!



「おなごがそがいな言葉づかいしよったらいかんぜよ」

わたしはキッと坂本さんを睨みつけた。

「梅太郎!!捕まえるよっ」

サッと懐に手をやって、懐剣の柄を握る。

「なんちゃあ、物騒なおなごじゃのう」

坂本さんはサッと間合いを取って。

「わしは北辰一刀流の達人やき、今のおまんには捕まらんがや」

「は?」

北辰一刀流の達人!?

坂本龍馬が剣の達人なんてイメージ全然無いけと…!!

「使いがあって来たがやけんど…えい偵察になったがぜよ。おまんにも会えたしの」

ポカンとしているわたしの肩を、坂本さんはバシバシ叩いて。

「おまんも気ぃつけや?ここまで本格的な挙兵ちゅう事は、長州も全藩挙げての覚悟じゃろ。戦になるぜよ」

言い終えると、もう立ち去り始めていて。

「無駄な血ぃを流さんでええ道無いもんかのぅ」

と呟く背を、わたしは見送ることしか出来なかった。
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