輪廻ノ空-新選組異聞-
「時に娘さん。町で新選組を見かけたりするじゃろか?」

「はっ?」

突然に聞かれて答えに詰まりそうになった。

「ああ…最近は派手な隊服と違うから…いてるとしても見分けはつきまへん」

「そうか」

残念そうに溜め息をついた久坂さんは手に持っていた茶碗を床几に置いた。

そして、ではな、と立ち去ろうと腰を浮かした久坂さんを、わたしは呼び止めてた。

「あの、京は天子様の住まう所。挙兵はそこに刃を向けること。尊皇言う思想に反するという恐れはありまへんの?」

怪しい大坂弁だけど。
怒らせるかもだけど。
わたしは聞いた。

「天子様を薩賊会奸と新選組の阿呆どもからお助けするんじゃ」

「…そうですか」

正当な理由を持ってるんだ。

やっぱり戦になるな…

避けられない。



わたしは久坂さん達が立ち去った後も暫く床几に腰掛けてた。
本当の戦なんてもちろん知らない。

監察方になるまでは毎日出てた巡察でも小さな戦闘はあった。

池田屋だってわたしの中では怖い戦だった。

想像出来ないけど…
しっかり情報を集めて備えないと。物も、心も。



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