輪廻ノ空-新選組異聞-
「蘭丸、お帰りなさい」
大坂から屯所に戻るって日にちを知らせてたからか、沖田さんが竹田口まで迎えに来てくれてた。
「沖田さん!」
思わず顔がほころぶし、声のトーンも上がってしまう。ホッとした瞬間だった。
「離れときまひょか」
山崎さんが苦笑を漏らしながら言った言葉に、わたしと沖田さんは同時に首を振ってた。
「いけません!!」「いけません!!」
同時に発した言葉も同じだった。
「ぷはっ」
山崎さんはたまらないといった顔で吹き出した。
「いやいや、あてられまんなぁ」
副長がふたりを離しておきたい気持ちがよう分かりま、と笑って続ける。
「からかわないで下さい!とにかく、土方副長にお二人そろって復命して、初めて任務は完了なのです。ですから、共に屯所に戻りましょう」
沖田さんは赤面しながらも、真面目に告げた。
わたしも何度も頷いた。
「戦になりますか?」
沖田さんは表情を改めながら、山崎さんに問いかける。
「ここまできたら、なりますな」
挙兵までして引っ込みつかんし、過激派はおさまらんやろう思います、と続けた山崎さんにわたしも頷く。
「須藤が久坂玄瑞に会うて少し話した内容からすると…建前にしとる天子様を助ける為言う信念は強うおますさかいに…」
「久坂玄瑞に!?」
山崎さんの言葉に仰天した沖田さんの、素っ頓狂な声がわたしを刺した。
「は…あの…偶然…」
無茶はしないというお互いの約束がある。
それをいつも破ってしまうのはわたしだ。
考えなしの行動をしてしまうからだけど…
今回は本当に偶然だし、と言いかけたら、山崎さんが助けてくれた。
「私から命じておなごの姿で探索してもろうたんですわ。で、団子屋で偶然一緒になった言う訳でおます」
そうそう、とわたしは頷いて。
「でもあなたから話し掛けたのでしょう?でなければ、普通のおなごに戦の話などしない筈です」
「う…」
わたしは一瞬答えに詰まってしまった。