輪廻ノ空-新選組異聞-


「蘭丸、お帰りなさい」

大坂から屯所に戻るって日にちを知らせてたからか、沖田さんが竹田口まで迎えに来てくれてた。

「沖田さん!」

思わず顔がほころぶし、声のトーンも上がってしまう。ホッとした瞬間だった。

「離れときまひょか」

山崎さんが苦笑を漏らしながら言った言葉に、わたしと沖田さんは同時に首を振ってた。

「いけません!!」「いけません!!」

同時に発した言葉も同じだった。

「ぷはっ」

山崎さんはたまらないといった顔で吹き出した。

「いやいや、あてられまんなぁ」

副長がふたりを離しておきたい気持ちがよう分かりま、と笑って続ける。

「からかわないで下さい!とにかく、土方副長にお二人そろって復命して、初めて任務は完了なのです。ですから、共に屯所に戻りましょう」

沖田さんは赤面しながらも、真面目に告げた。

わたしも何度も頷いた。



「戦になりますか?」

沖田さんは表情を改めながら、山崎さんに問いかける。

「ここまできたら、なりますな」

挙兵までして引っ込みつかんし、過激派はおさまらんやろう思います、と続けた山崎さんにわたしも頷く。

「須藤が久坂玄瑞に会うて少し話した内容からすると…建前にしとる天子様を助ける為言う信念は強うおますさかいに…」

「久坂玄瑞に!?」

山崎さんの言葉に仰天した沖田さんの、素っ頓狂な声がわたしを刺した。

「は…あの…偶然…」

無茶はしないというお互いの約束がある。

それをいつも破ってしまうのはわたしだ。

考えなしの行動をしてしまうからだけど…

今回は本当に偶然だし、と言いかけたら、山崎さんが助けてくれた。

「私から命じておなごの姿で探索してもろうたんですわ。で、団子屋で偶然一緒になった言う訳でおます」

そうそう、とわたしは頷いて。

「でもあなたから話し掛けたのでしょう?でなければ、普通のおなごに戦の話などしない筈です」

「う…」

わたしは一瞬答えに詰まってしまった。
< 225 / 297 >

この作品をシェア

pagetop