輪廻ノ空-新選組異聞-

気を取り直して、しっかり沖田さんの顔を見る。

「町の衆こそ、戦になるかどうか心配するんですよ?戦になったら、生活はどうなるのか、巻き込まれないか」

だから、聞いたのです、と続けた。

「戦になりますか?と」

そうしたら、あっさり肯定された。

それで、尊王を掲げて活動しているのに、帝の住むところを攻撃してもいいと思っているのか聞いた。

久坂さんは強い気持ちである事を「帝をお助けする為に」挙兵するのだとくくって告げた。

「そうでしたか」

沖田さんは少し気落ちしたように溜め息をつきながら言った。

「あなたは監察方の役目を至極全うに遂行した。私は心配ばかりしちまって…いけないですね」

と、微苦笑を向けて。

わたしはブンブンと首を振った。

「心配させて当然です、これまでの行いが無茶ばかりでしたから」

「分かってくれているならば、これから心配をし過ぎないようにします」

やっぱり微苦笑のまま言った沖田さんは私の頭をポンポンと優しく叩いて。

「はい」

わたしも笑みを向けて頷いた。

「にしても…土方さんは…」

と、沖田さんはプチプチと文句口調になった。

私達は心配されるような事など屯所でしない、それぐらいの分別はあるのに引き離しにかかるなんて、と続けた。

「悋気を起こしてるんですよ、きっと」

と締めくくる。

「りんき…?」

前にも聞いた気のする言葉だけど、何だっけ?

「やきもち、です」

「はぁ!?」

そんな訳ないじゃないですか!!

びっくりして声が大きくなったよ。

「まぁいいですが。あなたには私しか見えてませんしね?」

真顔で言われて、こっちのほっぺたに火がついた。

「もう!!」

山崎さんもいるのに!!

山崎さんは耐えかねたみたいに大笑いしてる。

「とっとと帰りますよ!!」

わたしは半分走るみたいな歩調で壬生を目指した。
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