輪廻ノ空-新選組異聞-
「やぁっっ」

鋭い気合いを互いに発しながら、じりじりと隙を探って円を描くように移動する。

剣術の試合では「蹲踞」というのがある。

でも、

「斬り合いで蹲踞をする馬鹿がいるか」

というもっともな考えから、試合だろうが何だろうが、稽古では実戦のように行う。

少し斜めの正眼に構える沖田さんは、いつでも打ち込んで来い、という隙を最初から作っているという事。

誘われて行くと、目にも止まらぬ速さで打ち込まれる。

だから…

その剣先を弾いて更に外側にはねてから、飛び込んで…打突動作の少ない突き…っ!


「やっっ、おっ、突きぃーっ!!」

「せいっ!!」


ダンッ

バンッ

ダダダッ

ダダンッ

ドンッ

バンッ

ガシィンッ


胴と胴が激しくぶつかって、鍔迫り合い。

だけど、わたしは完全に力負けするから、直ぐに沖田さんの体を突き飛ばす勢いで押し退けて後ろに跳び下がる。

けど、この態勢を立て直す隙が一番危険。

とは、頭では考えてないんだ。

反射的に着地した足で、床を蹴って再び沖田さんに飛び込む。

「やっ!はっ!はっ!はっ!やぁっ」

面を乱打。

する、けど…っ

「甘いっ!!」

擦りあげられた竹刀。

「しまっ…」

跳び下がる。

それを追い掛けて突きが、沖田さん得意の三段突きが来て。

ダーンッ!

床に倒れた。

「っくぅ!」

寸でのところで、上から突き下ろされた竹刀を、放さず持っていた竹刀で避ける。

避けられた勢いのまま振り下ろされる竹刀を避けるために、転がりながら移動して、大急ぎで立ち上がる。

「つぁぁあ!」

間断無く凄い勢いで面打ちが来た。

少し斜めに構える沖田さんに、一瞬の隙が見えた気のする籠手を打ちに行く。

ピシッとかすっただけで、沖田さんは力まかせに体当たりしてくる、鍔で受け止めながら、勢いを殺すために後退するけど、スピードが違う。

ドッ、ダーンッ

再び床に倒されて首もとに竹刀を当てられて、完全に負けだった。
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