輪廻ノ空-新選組異聞-


わたしは唖然としちゃって。

沖田さんがこんな事を言うなんて…!

「どうしちゃったんですか?」

おかしいよ、と思ったわたしは、自分の動揺と恥ずかしさと期待も混じったような緊張を必死で隠して沖田さんに静かに聞いてみた。

「どうもしません。ただ私がそうしたいだけなのです」

沖田さんの手が延びてきて、わたしの体をしっかり抱きしめ、近付いた顔。

男性の力強さが見えるのが、普段とは、真逆な感じがして…

「こわい」

と、思わず言ってた。

途端に沖田さんは顔を離して。

「すっ、すみません!!怖がらせるつもりでは…っ」

慌てて離した手、その指先が一瞬わたしのほっぺたに触れた。

それがひんやりしていて、わたしは驚いてその手を掴んでた。

「緊張してるんじゃないですか!?」

よ…よ、よ、欲情、して、体を熱くしているなら、指先だって熱い。

でも冷たい指先は沖田さんの気持ちが言葉とは違うことを教えてた。

「何があったんですか!」

何もない訳ない。

「言って下さるまで、離しません」

と、わたしは握った指先を更に強く握った。

「はぁ…」

沖田さんは溜め息をつくと同時に肩を落として。

「言いたくないのですが…」

「駄目です」

「あなたは知らない方がいいんです」

「駄目です!!そんなことなら余計に言って貰わないといけません」

沖田さんの胸の中だけに隠すなんて、絶対駄目だとわたしは言葉を継いだ。

「分かりました」

沖田さんは真顔で頷いて。

「土方さんが…」


何?
また土方さん!?
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