輪廻ノ空-新選組異聞-




やるせない…ってのは、こういう気持ちの時に使うのかな。

結局、六角獄舎にまで火の手はいかなかったから、捕まってた人達は無駄に斬り殺されてしまった事になる。

生け捕り、は新選組でも大前提。

生かしておいて、情報を掴む為に御用改めをするのだから。

なのに…生け捕った人達を全部殺してしまったんだ…。

町奉行だかなんだか知らないけど…

面倒だから、この際殺しちゃえみたいな事して、そしてその悪評は新選組のせいという流れになったらしい。

「はぁ…」

道場で解散が告げられて、そのまま巡察に出て行く沖田さん達の隊を見送って、監察方の室に戻りかけながら、わたしは大きな溜息を何度も何度も繰り返しちゃったよ。

そのわたしの肩を、突然掴む手。

「おい」

この掴み方も、その声のかけ方も、振り返らなくても分かるよ。

乱暴だなぁ。

「何ですか、土方副長」

ゆっくり振り返って土方さんの顔を見る。

「おっと。ご機嫌斜めか?」

茶化したように言う土方さんだけど…。どこかいつもの覇気に欠けるのは、疲れてるからだろうなぁ。色々とあって。

「土方さんも、大丈夫ですか?」

「ん?」

まさかそう返ってくるとは思ってなかったらしい土方さんは驚いたように目を丸くした。

「おめぇに心配されるなんざ、俺も落ちたもんだな!」

なんて失礼な。

「んなこたぁ、いい。おめぇにだけ伝えておかねぇと、と思う事があってな」

「なんでしょう」

「紗英も死んだ」

「…………えっ?」

女の人も問答無用ですか…!?

今度はわたしが盛大に驚いて声をあげてた。

池田屋で沖田さんに刃を向けた紗英さん。

亡き伊木さんに片思いしてた。

彼女も捕まっていたのだけれど…。

今回の事で殺されてしまったんだ……。




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