輪廻ノ空-新選組異聞-
何だか…一気に込み上げてくるものがあって…。
胸が詰まって。
「……っ」
涙腺がゆるんだ。
紗英さんの事は、もちろんいまだに怒ってるよ。
紗英さんも伊木さんの事で私に対して抱いただろう怒りの気持ちと同じだと思う。
ううん、もっと大きいよね。切腹させられちゃったんだから、伊木さんは。
でも私だって沖田さんを殺されそうになって、怒り心頭だし、何があっても好きになれない人だ。
でも思う。
この時代の人は、みんな自分が正しいと思う方向に真剣に向き合って、突っ走ってる。
真剣に「生きる」ということに向き合ってるよ。
だから…
そういう不本意な、不慮の死は…その人にとってどうなんだろうと思う。
完全燃焼した上で生きているからこそ…そういうのが宿命だって、スッパリ死を受け入れられるんだろうか。
わたしは…
まだ死にたくないよ。
まだまだ沖田さんと…皆と過ごしたい。
沢山の事を見聞きして、行動して、大切な仲間の為に働いて、この時代の流れがどうなるのかと…ちゃんと見たい。
今殺されたら…無念でたまらない。
それは、まだまだ私が命を完全燃焼させられてないからかな。
明日死んでも悔いがないってぐらい、精一杯、込めて、生きてないからかな。
わからない。
でも…紗英さんはもう、死んでしまったんだ。
沢山の人が理不尽に殺されてしまったんだ。
バフッ
突然視界が真っ暗になった。
「なっ!?]
何?
「泣くな」
降ってきた言葉。
後頭部に回された手が頭を押して、ぐいぐいとわたしの顔を押し付けてるのは…
土方さんの胸。
「男が簡単に涙を見せるもんじゃねぇ。誰かに見られたらどうする」
「……って!」
こんな体勢見られる方が問題ですが!!
と、わたしは慌てて離れた。