輪廻ノ空-新選組異聞-
急に、

沖田さんが恋しくなった。

一番安心出来て、

幸せな気持ちになって、

嬉しいのは…

沖田さんの腕の中だ。



「ったく、百面相だな」

土方さんが呆れたように口を開いた。

泣いたり、怒ったり、おどれぇたり。

「ぼ~っとして、総司の野郎の事でも考えてたんだろ」

餓鬼同士で似合いだな!と捨て台詞のように言って、土方さんは何事もなかったかのように私から離れると、副長室に帰っていった。


はぁ。


思わずため息をついて、わたしも監察方の室に戻った。




「副長も困ったお人やな」

先に戻っていた山崎さんが苦笑をまぜながらわたしに話しかけてきた。

「は?」

み、見てたんですか…!と、思わず小声ながら叫ぶような口調で言ってた。

「見てくれて言わんばかりの場所やったしな」

と、山崎さんは面白そうに言って。

「須藤を見とると、つい構いとうなるて言うてはったな、副長」

迷惑なんですけど、とため息をつく。

「そないな事より」

と、山崎さんは居住まいを正して座ると、わたしにも座るようにと、自分の前の畳を叩いた。

「焼けてしもた街、戦の後。こないな時には犯罪も起きやすいよって、忙しくなるで」

「はい」

身軽な監察方の多忙はいつまで続くか分からないと、山崎さんは続けた。

「今日はもうゆっくりしなはれ」

副長命令やから、と締めくくった。

「はい!ありがとうございます!!」

山崎さんもゆっくりして下さいと、わたしは告げて、沖田さんが巡察から戻ってくるのを、屯所の長屋門で待つことにした。
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