輪廻ノ空-新選組異聞-

「暑い…」

じりじりと照りつける太陽。

梅雨明けはしてるみたいだけど…蒸す暑さ。

でもほこりっぽくて。

長屋門で日陰になっている場所で、背中を壁に預けて立った。

巡察は一刻ぐらいで終えて戻ってくるから、そんなに待たないでいいと思うけど…、退屈なのにはかわりなくて。

「素振りでもしてようか」

呟いて、一旦道場に行って、木刀を手に長屋門に戻った。

汗は次から次から吹きだしてくるから、もうこの際関係ない。

門番に当たってる隊士さん達に一言断ってから、中で素振りを開始。

ビュッ

ビュッ

木刀が風を切る音が、蝉の声に混じって小気味良く響く。


「須藤は自分の強さの秘訣を何だと考える?」

暑過ぎてクラクラしてきて。

ちょっと手を休めた所で門番の隊士に話し掛けられた。

「強さ…って、強くないと思いますが…」

思わず首を傾げてしまった。

「はっ、嫌みだな。あれだけ沖田先生と互角に渡り合って強くないとは」

まぁ、そういう謙虚さが良いのかも知れんが…、と脈絡の無さそうな納得をした隊士はわたしの腕を掴んで。

「細い腕して、丈が高いだけで強さに繋がるとは思わんが…肩もなで肩だしな…」

更に肩を叩かれた。

「こういう不利があるから、稽古には出来る限り励みます」

気安く触られて、ちょっとムッとしながら答えた。

と、そこにざわめきと足音。

門番さんは慌てて門の脇に直立して。

「一番隊のお戻りであります!」

と、中にも聞こえるような声で告げた。

沖田さんが先頭になって戻ってくると、伍長役の隊士が長屋門の所で全員の点呼をして解散となった。

それをジリジリと待って、わたしは漸く解放された沖田さんの所にかけつけた。
< 247 / 297 >

この作品をシェア

pagetop