輪廻ノ空-新選組異聞-
「暑い…」
じりじりと照りつける太陽。
梅雨明けはしてるみたいだけど…蒸す暑さ。
でもほこりっぽくて。
長屋門で日陰になっている場所で、背中を壁に預けて立った。
巡察は一刻ぐらいで終えて戻ってくるから、そんなに待たないでいいと思うけど…、退屈なのにはかわりなくて。
「素振りでもしてようか」
呟いて、一旦道場に行って、木刀を手に長屋門に戻った。
汗は次から次から吹きだしてくるから、もうこの際関係ない。
門番に当たってる隊士さん達に一言断ってから、中で素振りを開始。
ビュッ
ビュッ
木刀が風を切る音が、蝉の声に混じって小気味良く響く。
「須藤は自分の強さの秘訣を何だと考える?」
暑過ぎてクラクラしてきて。
ちょっと手を休めた所で門番の隊士に話し掛けられた。
「強さ…って、強くないと思いますが…」
思わず首を傾げてしまった。
「はっ、嫌みだな。あれだけ沖田先生と互角に渡り合って強くないとは」
まぁ、そういう謙虚さが良いのかも知れんが…、と脈絡の無さそうな納得をした隊士はわたしの腕を掴んで。
「細い腕して、丈が高いだけで強さに繋がるとは思わんが…肩もなで肩だしな…」
更に肩を叩かれた。
「こういう不利があるから、稽古には出来る限り励みます」
気安く触られて、ちょっとムッとしながら答えた。
と、そこにざわめきと足音。
門番さんは慌てて門の脇に直立して。
「一番隊のお戻りであります!」
と、中にも聞こえるような声で告げた。
沖田さんが先頭になって戻ってくると、伍長役の隊士が長屋門の所で全員の点呼をして解散となった。
それをジリジリと待って、わたしは漸く解放された沖田さんの所にかけつけた。