輪廻ノ空-新選組異聞-
「何だか久しぶりに、当たり前な事があなたに通じなくて…」

と、沖田さんは笑い出して。

「あなたなんだなぁと、思いましたよ、蘭子さん」


不意打ちの「蘭子さん」に、ほっぺたが燃えた。

「知らないのに、知ってるフリをするのがうまくなっただけです!」

赤面を誤魔化すみたいに顔を叩きながら乱暴に言い返した。

「それもあるのでしょうが」

と、沖田さんは肯定しながらも言葉を続けた。

「最初は着物にも着られてる風で、居心地もひどく悪そうで、浮いたように見えていたのに、近頃は男らしく所作も違和感無く、すっかり馴染んで」

もうずっとここの者のようだ、と言ってわたしの頭をポンと撫でた。

わたしは沖田さんと並んだ歩調から、少し追い越して前に立った。

「それは、皆さんのお陰です。何よりも沖田さんの」

絆が深まり、強くなるたびに、わたしはこの幕末に根を下ろしていってると思う。

沖田さんとずっと一緒にいたいから。

沖田さんを支えられる、しっかりとした地盤も欲しい。

沖田さんに触れられるたび、わたしは沖田さんの気と溶け合うことで、より一層この時代の人になってると思う。

言葉にはしなかったけど…

沖田さんには全部伝わったみたいで、頷いてくれた。

すごく、

すごくすごく嬉しい。

本当に沖田さんの何もかもが、わたしの生き抜く原動力になってる。

こんなに大変な時代だけれど…ひとりじゃないから。


だからわたしはすっかり焼けてしまった洛中の様子を見渡して…呆然とした気持ちになったけど…。でも、奮い立つ気持ちも大きかった。

「沖田さん、僅かでも役立てるよう考えないとダメですね」

「はい」

「頑張りましょう!」

わたしはへこたれない。

パワーは一杯貰っているから!
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