輪廻ノ空-新選組異聞-
「もう!」
考え過ぎたのと、でも今は大丈夫ってのと、色んな気持ちが相まって悲しいとかそんな気持ちじゃなくて、腹が立ってきた。
「そんな馬鹿な事、軽々しく口にしないで下さい!」
不吉な言葉は使ってはいけません!
と更に言い募る。
「でも、あなたが転んでしまわなくてよかった」
例え噂に過ぎなくても、あなたの代わりに私に厄がつくなら本望ですし、とか更に言う沖田さんはニコニコ顔で、端からそんな迷信をからかってる様子。
わたしも…そんな沖田さんに救われたのは本当で。思わず吹き出してしまった。
「結局わたしにも沖田さんにも厄はついてないですよ!」
だって転んでいないもの、と続けた。
「でしょう。蘭丸が深刻な顔をするから、吹き飛ばしちまいました」
と沖田さんが返してくれた言葉に、ハッとした。
わたしが未来を僅かながらでも知っていることを沖田さんは知ってるんだ。
だから、狼狽えたりするのは反則。
自分の胸の内だけにしまっておくことを決めた日から。
わたしは改めて気持ちを引き締めた。
暫く他愛のない話をしながら坂道を上った。
修学旅行で歩いた時は、もの凄い数の観光客とお土産物屋さんだった。
それとは全然違うけど、道の様子とか、全体的な空気は同じで。
坂道が終わって開けた目の前に楼門が見えた瞬間、現代と変わらない風景に言葉も出ないくらいだった。