輪廻ノ空-新選組異聞-
手を繋いだまま。
言葉もなく山道を上がった。
わたしもだけど、沖田さんの中でも、さっきのふたりの会話とかがグルグルしてたんだと思う。
力強く握ってくれている手のぬくもり。
すごく心強くて。
何より、伝わってくる気持ちは、多分、わたしと一緒。
「着きました」
漸く口を開いたのは、将軍塚に到着して、目の前に広がる京の景色を前にした時だった。
「………っ」
呼吸を整えながら、わたしは沖田さんの隣に立って、広がる光景に視線を釘付けになってた。
清水寺から見た時よりもハッキリわかる、京の焼け野原。
尊王攘夷と叫ぶ、長州の人達と、公武合体という、天皇家と幕府が協力して国難に当たろうという考えの人達が、ぶつかって、戦争になった。
そして普通に暮らしていた街の人達が巻き添えになったんだ。
そんなつもりはなくても、武力を使うっていうのは、今日明日の命の保証を格段に無くしてしまう。だから…不本意な別れが山ほど築かれるんだろう。
わたしだって、新選組にいて、同じ不安をずっと抱えている事を否定できない。
だから、さっきの茂みの中でエッチしてた二人の事が頭から離れない。
「あの女の人の気持ち…」
わかります、とわたしは、おもむろに口を開いた。
つないだままの手。
もう山道をのぼってる訳じゃないけど、しっかりと握り合せたままの手。
お互いの掌は、剣術のせいでマメだらけのでこぼこの手。
その手をギュッと握って。
「でも、わたしだったら違います」
わたしは広がる景色にじっと視線を向けたまま言葉を継いだ。
「大切な人が亡くなった時、支えにするために…頼りの存在にするために、こどもを欲しがるのは…本当の愛情でしょうか」
大切な人が、心残りを増やしてしまうと思ったら、そんな事を願えないし、何より、残される自分が悲しみと寂しさに耐えられないから、というなら…何か証が欲しいからとか、そういう気持ちなら、それは自分の為の願いであって、愛情じゃありません。
「それって…相手に依存しているだけですよね、自分の為に」
わたしは沖田さんに視線を移してから言葉を切った。