輪廻ノ空-新選組異聞-
みんなの言いたい事を黙って聞いてた。
あれこれ口々に言ってたけど…
結局まとめて要約するとこうだ。
「みんな近藤先生のこと、大好きなんですねぇ」
沈黙がおりた瞬間、わたしは思わず感嘆の気持ちで呟いてた。
江戸の試衛館から一緒にやってきた仲間で。
上洛してからも共に力を合わせてやってきた。
局長として隊を束ねる立場になったけれど、変わらずやってきた。
なのに、池田屋で功労が認められて、幕府から褒美を貰い、将軍様からも誉めてもらったら偉そうな態度をとるようになった。
新入隊士が増えて、彼らの前では自分たちを子分扱いするような言動や態度に頭がきた。自分たちは江戸からずっと仲間で、変わらない気持ちでいるけど、裏切られた気分だ。
近藤さんにはがっかりした、残念で腹立たしい。
こんな気持ちでは団結など無理で、命を懸けて戦わなくてはいけないが、近藤さんが態度を改めない限り勤めにも励めない。
だから会津藩公に直訴した。
「近藤先生のことが好きだから、こんなに怒ってるんですよね」
言って、みんなを見渡すと、沖田さんがにこにこ笑ってるのが見えた。
「ったりめぇだろ!惚れこんでなきゃ、他流派なのに試衛館に住み着いたりしねぇ」
永倉さんが吐き出すように言った。
みんなの様子も、ちょっと張り詰めてたものが緩んで。なんだかわたしも少し肩の力が抜けた。
で、更に気付いたことを言おうと決めた。
「それと、気付いたのですが…」
と、わたしは口火を切る。
「直訴した皆さんって、元武家の方ばかりですよね」
本当に、近藤先生の舞い上がってしまう程の喜びを分かってらっしゃいますか?と続けた。