輪廻ノ空-新選組異聞-
直訴組は、ちょっとムッとしたような顔になって。

「わかっている」

と言った。

でもわかってはいないって、わたしはすごく感じたから、その説明をしたんだ。


わたしだってここに来て、もうすぐ一年だ。

幹部と言われる、試衛館からのみんなが、どういった身分だったかとか、そういうのはだいぶ把握した。

沖田さん、サンナンさん、永倉さん、齋藤さん、原田さん、藤堂さんは武家の出だ。脱藩したり、浪人となってから暫くが経っていたりはするけど…でも武家。直訴組で言うと、江戸からの仲間じゃないけど、古参の隊士で、同じ監察方にいる島田さんも武家の出身だと言ってた。

一方の近藤先生や土方さんは、武家の出じゃない。農家の出身。

わたしだって覚えてるよ、江戸時代の士農工商っていう厳しい身分制度。ちゃんと漢字でだって書ける!

切り捨て御免…だっけ。武士は武士以外から無礼を働かれたら、斬って捨ててもいいっていう…。

永倉さん達は斬っていい方、近藤先生達は斬られる方。

この差は大きいよ。

本当にすごくすごく大きい。

命のやり取りの違いの大きさ程、身分の差が大きいってこと。

だから、武士のように刀を腰に佩いて活動出来ることだけでも凄いことで嬉しかったと思う。やる気は武士以上に決まってる。

そこに更に武家社会のてっぺんの人から誉められたら…

雲の上の人から名指しで誉められたりしたら…

多分、大げさではなくて、死んでもいいってくらい超感動感激だと思うよ。

それに、武家に生まれながら武士という身分を捨てて浪人になった人たちから見たら、幕府や将軍なんてそんなにありがたいものじゃないはずで。

だから、根本から違うせいで、近藤先生の喜びは真からは理解出来ていなくて当たり前なんだ。


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