輪廻ノ空-新選組異聞-
わたしの思うところを長々と話してみたんだけど…

多分、農民出身を強調された近藤先生たちも、武家出身だからほんとは分かってないんだろうと指摘された直訴組も気分は良くなかったと思う。

でも、一度も口を挟まずに聞いてくれた。

「皆さん…近藤先生が大好きです。でもちゃんと分かれなかった部分で近藤先生の態度に余計に腹が立った」

わたしは皆を改めて見渡した。

腕組みをして聞いてくれていた永倉さんが不服そうながらも、頷いて。

「確かに、蘭の字に指摘された通りだと思う。認めたくはねぇんだが…。言われて気付くなんざ情けねぇし」

と、溜息を大きく吐き出すのと一緒に言った。

「ふふ、蘭丸、手柄ですね。この人達を黙らせるだけじゃなくて、言いくるめるんですから」

沖田さんが嬉しそうな顔で。

「ちょっ、言いくるめるってなんですか。本当にそうだと思ったんです!身分って…身にしみついてるものだと思うから…。多分気付けないんです。でも大きいことです」

ちょっと場の空気がゆるんで、皆から力が抜けたのが分かった。

沖田さんも武家の出だけれど…直訴の事は寝耳に水だと言って、ビックリしてた。

そんな武家だけれど、訴えに加わらなかったもう一人の人、サンナンさんが続いて口を開いた。

「もうひとつ忘れてはいけない事がある。新選組も入隊志願者が増え、隊士も増えてきた」

所帯が大きくなれば、幹部の筋の通った態度が重要になる、と続けた。

「仲間なのだから対等だ、と局長とその下の役職の者が気楽に接している姿を見て、平隊士達が筋目を通した礼節を持った態度をとれるだろうか」

これには、みんな本当にぐうの音も出なかったみたい。

「済まなかった」

と、一斉に直訴組が頭を下げたんだ。

「局長には、江戸に下向して隊士を募りに行って貰う事にする予定だ。益々新選組は大所帯になるだろう。だから、皆ももう少し公としての在り方を考えて貰いてぇ」

土方さんもそれに続いて言った。

「分かった。反省する」



こうして、この事は一件落着。

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