輪廻ノ空-新選組異聞-
わたしは…どっと疲れて。

やっぱり…生意気な事言ったし…それこそ、私だって農家の出になってるんだから、手討ちにされても文句言えなかったんだから。

肩から力を抜いて、脱力して後ろの壁に背を預けて。

「はぁ〜」

思わず大きく息を吐いてしまった。

そこに永倉さんと齋藤さんがやって来て。

「おめぇがいて良かった」

と、永倉さんに肩を叩かれた。

「男だけでは、このような見方、考え方は難しかっただろうと思う」

齋藤さんも珍しく笑みを見せながら言ってくれた。

わたしは慌てて居住まいを正して。

「いえ、生意気を言いました。けれど、お役に立てたのなら良かったです」

わたしだって、皆さんの事が大好きなんですよ、こういう仲違いは嫌ですと言ったら、また永倉さんに肩を叩かれた。

「ありがとよ」

力加減もなく叩かれた肩を抑えながら、私は笑顔でうなずき返した。

「蘭丸、ありがとう。私からも礼を言います」

沖田さんも満面の笑みで。

「近藤先生のことが大好きなんですね、という言葉には、本当に私も気づくところがありました。実感しましたから、本当に皆の事が大切なのだと」

わたしも嬉しくなってきて頷いた。

「あのね、沖田さん。愛情の反対は無関心なんですよ。愛情が深いから憎しみとか嫉妬も大きくなるんです」

「そうですね」

嫉妬については、あなたに教わった部分がとても大きいです、と付け足した沖田さん。

「須藤」

土方さんも近藤先生も一緒に近寄ってきて。

「てぇしたもんだ」

と、頭をぐしゃぐしゃにまぜられた。

「まぁ、一番の手柄は、そんなおめぇを同席させた俺だがな」

と、一言多い。

まぁ、確かにそうだけどさ。

近藤先生も喜んでくれたのが、わたしはすごく嬉しかった。



その近藤先生が江戸に旅立たれる。その先触れみたいな感じで、藤堂さんが先に江戸に下った。北辰一刀流なのだけど、その伝手で、入隊して貰いたい人がいるのだとか。

新選組も大所帯になってきて、にぎやか。前川邸では手狭な感じ。

会津藩からもお給料がしっかり払われるようになったし、外泊したりする隊士も多くて余り感じないけど…かなり手狭。





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