輪廻ノ空-新選組異聞-
「こんな何も無い、普通の真っ昼間から、どうしてそのような…」

ボソボソと言われて、説明せざるを得なくなった。

ずっとそんな事を考えているのかと思われるのも、恥ずかしいし。

「隊士が増えたら屯所が手狭になるなって…。もし一番隊のままだったら、室がいっぱいで安眠できなかっただろうな…と」

監察方という少人数の室になってひとまずは安心だけれど、一番安眠出来る場所について考えていて…

「沖田さんの隣だなと…。でも…寝不足になるなとか…」

そう言い終えて、沖田さんの顔を見たら…

沖田さんは真っ赤になったままだけれど、凄く嬉しそうに笑みを向けてくれて。

そうしたら…胸一杯に幸せな気持ちが満ちて来て。

ああ、わたしはこの人の事が大好きなんだ、誰よりも、大切で愛しいんだって、今更な実感が込み上がってきた。

「……幸せでタマラナイ、そんな寝不足ですね」

と、沖田さんが同じ気持ちを込めた言葉を返してくれたのが分かって…胸がキュンキュンと高鳴る。

「はい」

わたしは深々と頷きながら、しっかりと返事をした。

「そんな寝不足とも、かなりご無沙汰になってますが…」

約束はするのにね、と同意を求められて。

「えーっと…。二ヶ月近く空いてしまうのは…やっぱりその、かなり、ご無沙汰になってしまうんです…よね?」

「えっ?」

沖田さんが狼狽したように声をあげた。

「そう…だと、私は思っているのですが…」

この二ヶ月足らずの間でも…何度かそういう雰囲気になって、お預けになっちまっているので、余計にそう感じるのでしょうか、と更に質問を重ねられた。

「い、いえ!」

わたしは慌てて首をふる。

「私も…その…この二ヶ月が長くて…その…ふしだらなのかなと思ってみたり…」

「そうでしたか」

と、沖田さんは安心したように微笑した。

「近藤先生が休息所の準備をなさっていますが…。私たちもそういう家を持ちたいですね」

「休息所?」

「はい。馴染みの太夫を身請けして住まわせ、そこに帰るんです」

基本的な生活は屯所ですが、と続けて。

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