輪廻ノ空-新選組異聞-
大所帯
十月に入って近藤先生が江戸からお戻りになった。
藤堂さんの伝手で、文武両道という伊東かしたろう…甲子太郎という純和風な整った顔立ちの人が入ってきたのだけれど…近藤先生がびっくりするぐらい信頼していて、新選組の要として参謀に就任。
局長、参謀、副長という感じ。
…………。
土方さんは特に何も感じていない素振りだけど、いい顔もしてないし。
帰ってくるなり、嬉しそうに舞い上がっている風な近藤先生を、ちょっと宥めつつ、新選組にプラスにはなるだろうってのは受け入れたのかな。
「総司、土産を言付かってきた」
沖田さんと壬生寺で子供たちの相手をして本堂の所で遊んでいると、藤堂さんがめずらしく足を運んできて。
「お光さんからだ」
と、手に持っていた巾着を差し出した。
「えっ、お光姉さんから?」
ありがとう、と沖田さんは慌ててその巾着を手に取った。
「それと、言伝もある」
と、藤堂さんは一度言葉を切ってから言った。
「年始とお盆のあいさつしかしてこないから気が揉めます。ちゃんと色んなこと知らせなさい」
藤堂さんの言葉をきいて、沖田さんは苦笑を漏らした。
「筆まめからほど遠いからなぁ」
答えながら巾着の中身を出した。
コロコロとした更に小さな巾着みたいなものふたつと一緒に折りたたまれ結ばれた紙が出てきた。小さな巾着には小さな鈴がついていて、チリチリとかわいらしい音を立てた。
「文だ」
蘭丸、これを持っていて下さい、と沖田さんは出てきた中身と巾着を私に渡して、文を開いた。
私は手の上の小さな巾着みたいな、お守り袋みたいなものを見下ろした。手縫いみたいで、淡い桜色のものに緑を組み合わせたものと、白と水色のもの。
かわいい…。
そんな事を思いながらしばらく眺めていたけれど。
黙って文を読んでいる沖田さんに視線を戻すと、バチッと視線が合った。
「沖田さん?」
私は「はい」と手の上の小さな巾着を沖田さんの方に差し出した。