輪廻ノ空-新選組異聞-
休息所に戻ると、買ってきたものを出して、早速お料理。

煮干しと鰹節は腐らないだろうし、といつ住み始めるかわからないものの、ちょっと多めに買って、木箱にしまう。

その煮干しと鰹節で大きな鍋をつかって出汁をとりつつ、玄米を浸水させて。

南瓜を切って、面取りして。鯖も半身だけ貰ってきたのを下ごしらえ。

一気に家の中が、人が生きている暖かなものへと変化していく。

屯所では感じられないアットホームな感じ。

やっぱりお出汁の香りとか、重要なんだ。

「幼い頃の風景が蘇ってきちまう」

沖田さんも鼻をくんくんさせながら土間にやってきた。

出来た出汁を使って、南瓜の煮つけ、鯖の煮つけを作り始める。出汁にお味噌を溶かして、おみおつけの準備も万端!

「なんだか本当に…夫婦みたいですね」

沖田さんが嬉しそうに同意を求めてきた。

もちろん私も笑顔で頷く。


しっかり浸水させて炊き上げた玄米ごはんをお茶碗に盛って、お膳にのせて、夕餉の準備完了!

沖田さんのリクエスト通り、南瓜の煮物、鯖の煮つけ、大根のおみおつけ、そしてごはんとお漬物。

厨からお膳を沖田さんが運んでくれている間に、私はお風呂を沸かす為に、お勝手から外に回って、薪をくべて火を熾しておく。お水は沖田さんが夕餉の準備の間に汲んでくれていたんだ。


まだ少し明るかったのだけれど、行燈に灯を入れて、ふたりで向かい合って座った。


「では、いただきます」「いただきます」

ふたりで手を合わせて、声を重ねる。

「うん、美味い」

沖田さんが心底美味しそうに、嬉しそうに頬張ってくれながら言うもんだから、私も頬がゆるんじゃうよ。

「嬉しいです。よかった」



「厨を使っていて、不便はありませんでしたか?」

「はい。特には。広すぎないので、おなごには使いやすいかなと思います」

「そうですか。ならば良かったです」


あれ?

沖田さんの背後の火鉢に、鉄瓶に燗を付けられた徳利が一本。

「沖田さん、お酒、ですか?」

「ん?ああ、そうなんです」

たまにはちょっとぐらいどうかなと思ったのです。と沖田さんがちょっと照れたように言った。

普段は下戸で殆ど召し上がらないから、恥ずかしかったみたい。


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