輪廻ノ空-新選組異聞-
私が入浴を終えて室内に戻ると、お膳を片付けてくれた沖田さんが、続きの間に布団を敷いてくれ始めているところだった。
「沖田さん、すみません…!」
慌てて駆け寄る私。
「お蘭。総司、と」
布団を抱えたまま立ち止まった沖田さんは、片手で器用に私のおでこをいたずらっぽく指ではじいた。
「うっ」
わたしは思わずおでこをおさえた。
「は、はい。総司さん」
よしよし、と沖田さんは、こんどは頭を撫でて。
こ、こども扱い…。
なんてほっぺたを膨らませている私の前で、沖田さんが布団を広げた。
二組用意して、枕もふたつあって。
でも…布団と布団の間に隙間はなくて。
それを見た瞬間、また一気に胸が破裂しそうなぐらいドキドキいい始めたよ。
沖田さんは布団の頭の方に置いていた行燈を指差した。
「この場所でいいですか?」
えっ、と私は息をのんだ。
出合茶屋の行燈は小さくて。余り明るいと感じなかったのだけど…。ここの行燈は生活の為だから障子張りの面積が大きくて、とても明るい。
「け、消していただけると…助かります」
「それは承知できないな」
あなたの顔が見えなくなる、と沖田さんは言った。
更に、もうこれ以上赤くならないだろうって思ってた顔が、ボンと音を立てたかのように更に熱くなった。
「ん~、では」
と、沖田さんは行燈を持ち上げて、茶の間との仕切りの襖を行燈の幅だけ開けて、その向こう側に置いてくれた。
遠くなった行燈で、室内は安心できるほの暗さになった。
ちょっと肩の力を抜いた私。
「ありがとうございます」
「いいえ」
沖田さんは言って、布団の端っこに立ち尽くしていた私の肩を後ろからそっと抱き寄せて、そしてぴったりと体をくっつけて抱きしめてくれた。
布越しに伝わってくる沖田さんの体温。そして、息遣い。
私の全身もドキドキと、全てが心臓になったんじゃないかってぐらいになってた。