輪廻ノ空-新選組異聞-
近藤先生の休息所で過ごしたのは、たったの丸1日だったのだけど…

屯所に戻ってみると、江戸から加入したひとたちも増えたからか、益々手狭になってた。

まさに大所帯。

監察方も人が増えたけれど、室はなんとかまだ平隊士の人達より余裕をもった場所が与えられてた。



「そろそろ移転を考えねぇとな…」

と、局長の後に、私の直属の上司にもなる土方さんの所に挨拶に行ったら、そんな風に呟いてた。

「こんな大人数引き受けてくれるところ、ありますかね?」

沖田さんは、腕組みをして首をひねっている。

「ま、目星はつけてるさ」

と、土方さん。

私は勿論…、年表を暗記してるので、どこか知ってた訳だけど…

危うく口走りそうになったのをとどめて。

「大所帯になると、行き届かないこととか増えますよね」

と、別のことを言ってみた。

けど、だから厳しい局中法度が奏功するんだって、土方さんは鼻息も荒い。

士道に背いたり、勝手に金策したり、私闘をしたり、勝手に脱退したりすると、全部切腹。

今までだって効力を発揮してはいたけれど、これは本当に大人数になってから、その威力を発するんだっていうのは、何となく想像はつくけれど…。

「観察方には隊内にも今まで以上に目を向けてもらわねば、ならねぇな」

と言われて、まだまだ沖田さんとの暖かく、そして熱く、あっという間だった時間の余韻にひたってた私は、姿勢を正したのだった。

ちゃんと、気を引き締めて。

ずっとちゃんと沖田さんと一緒に隊士として生きていくんだから。

そんな風に気持ちを引き締め、これからの大所帯での生活にも改めて注意深くしようと決めた。



< 292 / 297 >

この作品をシェア

pagetop