輪廻ノ空-新選組異聞-
黒谷の大きくて立派な山門。
ここを潜るとどんどん緊張してきた。
土方さんがいるとはいえ…
その土方さんさえかしこまってるんだよ…!
広い広間…って、広いから広間って言うんだよね…そこに通されて、暫く待たされた。土方さんが前でわたしは斜め後ろあたりに座って。
「殿のおでましである」
という言葉と同時に土方さんが平伏するから、私も慌てて畳におでこがつくぐらいまで頭を下げた。
お殿様だよ!
やんごとない人なんだよね!
小さく衣擦れの音がして、座る気配がして。
「良い、面を上げよ」
と、少しまろやかなのだけれど、とてもくっきりとした声で告げられて、土方さんが「ははっ」と言って少しだけ身体を起こしたのを盗み見て、私もちょっとだけ上半身を持ち上げた。
うーん…しんどいぞ、これは。
「いつもご苦労であるな、土方」
「恐れ多いことにございます。大きな進展もなく、殿にはもどかしい想いをされているのではなかろうかと、申し訳なく思うております」
「進展などが起こるまでの、地道な情報収集の方が数段大切であろう?」
して、今日そなたの後ろに控え居るものは何者じゃ?という声が聞こえてきた。
「この者は手前どもにて、監察方をつとめおる須藤蘭丸と申します」
私はその言葉を受けて、もう一度深々お辞儀をした。
「須藤蘭丸にござりまする」
「上様が、より詳しく、細かで、実際的な見聞をご所望とのことでしたので、昨日大坂より戻って参ったこの者を連れていた次第でございます」
そう伝えると、殿様は「おお、それはありがたい」と、嬉しそうな声で言ってくれた。
思わず顔を上げちゃったら…見えた殿様。とっても端正な顔立ちの若い殿様だった。バチッと視線が合う。
慌てて目をそらしたんだけど、殿様は私の方を見て言葉を続けた。
「大坂の情勢など、そなたが感じたままでいい。遠慮することなくありのまま述べてくれ」
と、落ち着いた声音で言って、じっと私の方を向いたままなのが、目をそらしたままなのに分かってしまうぐらい。
ここを潜るとどんどん緊張してきた。
土方さんがいるとはいえ…
その土方さんさえかしこまってるんだよ…!
広い広間…って、広いから広間って言うんだよね…そこに通されて、暫く待たされた。土方さんが前でわたしは斜め後ろあたりに座って。
「殿のおでましである」
という言葉と同時に土方さんが平伏するから、私も慌てて畳におでこがつくぐらいまで頭を下げた。
お殿様だよ!
やんごとない人なんだよね!
小さく衣擦れの音がして、座る気配がして。
「良い、面を上げよ」
と、少しまろやかなのだけれど、とてもくっきりとした声で告げられて、土方さんが「ははっ」と言って少しだけ身体を起こしたのを盗み見て、私もちょっとだけ上半身を持ち上げた。
うーん…しんどいぞ、これは。
「いつもご苦労であるな、土方」
「恐れ多いことにございます。大きな進展もなく、殿にはもどかしい想いをされているのではなかろうかと、申し訳なく思うております」
「進展などが起こるまでの、地道な情報収集の方が数段大切であろう?」
して、今日そなたの後ろに控え居るものは何者じゃ?という声が聞こえてきた。
「この者は手前どもにて、監察方をつとめおる須藤蘭丸と申します」
私はその言葉を受けて、もう一度深々お辞儀をした。
「須藤蘭丸にござりまする」
「上様が、より詳しく、細かで、実際的な見聞をご所望とのことでしたので、昨日大坂より戻って参ったこの者を連れていた次第でございます」
そう伝えると、殿様は「おお、それはありがたい」と、嬉しそうな声で言ってくれた。
思わず顔を上げちゃったら…見えた殿様。とっても端正な顔立ちの若い殿様だった。バチッと視線が合う。
慌てて目をそらしたんだけど、殿様は私の方を見て言葉を続けた。
「大坂の情勢など、そなたが感じたままでいい。遠慮することなくありのまま述べてくれ」
と、落ち着いた声音で言って、じっと私の方を向いたままなのが、目をそらしたままなのに分かってしまうぐらい。