輪廻ノ空-新選組異聞-
再出発
雨がふってた。
ザーザー。
店の人が貸してくれた傘は、一本。降りだしたばっかりで、他は全部出払ったばかり…とかで。
「私が持ちます」
すっかり体育会系のノリに馴染んでいるのは、元から武道をしてたからだけど…
「いいですよ。私の方が身の丈が高い」
沖田さんはあんまりそういう事に頓着しないみたい。
「人生初の相合傘!」
と、心の中で言ったら、自分で言ったのにドキドキしてきた。
「じゃあ…お願いします」
傘を渡した手と手が触れた。
「わわっ」
慌てて離したら、傘が沖田さんの頭に被さるように落ちた。
「まったく、気を付けて下さい」
「沖田さんだって離したのに!」
抗議しつつも、意識し過ぎで顔が熱い。お酒だけのせいじゃないよ、これ。
「あなたの声に驚いたんです」
答えた沖田さんの顔は暗くて、提灯の光だけじゃ良く見えない。
島原から屯所まで、ほぼ一直線に北上するんだけど…時々触れる体にドキドキドキして会話が出来ないまま。
「さて、では…」
屯所に着いて、傘や肩についた滴を払いながら沖田さんは言った。
「あなたはゆっくり寝て下さい」
言われて私は静まり返る一番隊の室に入った。門番以外は無人で、本当に静かで。
雨の音がいやに大きく耳に入った。