輪廻ノ空-新選組異聞-
たったの9歳で、家族から引き離されて、知らない人ばっかりの中に?

「私には近藤先生がいました。いつも気にかけてくれて、何くれとなく力になってくれて…。とても心強かった。近藤先生がいたから乗り越えられた。あなたにとって、私がそんな存在になれたら…力になれたら、といつも思っていますよ」

向けられた言葉。
微笑み。

胸がぎゅっとなって、
詰まって、
そしてありがとうの気持ちと、それ以上の大きな感情で涙が溢れた。

わたしはこの人の事が好きなんだ。

優しくするだけじゃない、隊務では必要以上に厳しいぐらい厳格になって。いつだってわたしの一番の安全と安心を考えてくれてる。自分にとっては、きっとお荷物でしかない存在のわたしなのに。何の得も利益もないのに。無償で向けられる愛情。

惚れちゃって当然じゃん。

わたしだって沖田さんのプラスになりたい。
お荷物なんかじゃなくて、少しでも力や癒しになりたい。貰った分だけ…ううん、それ以上のお返しをしたい。
隣で。

「沖田さん…。ありがとうございます。どれだけ…沖田さんがわたしの支えになってるか…。言葉では言い尽くせないです」

良かった、と沖田さんは更に微笑みを深くして。


「沖田さん…死ぬのは…怖くないですか?」

わたしは沖田さんに促されて、畳の上に腰を下ろしながら聞いた。

「命のやりとりなんて、もういつもの事でしょう。覚悟は出来ていますからね。巡察に出るのだって、殺すか、でなければ殺されるかの戦場に出るのと変わらないと考えています」

淡々と淀みなく答える言葉は、沖田さんの本心だろう。

「今夜だって、斬られて死ぬかもしれない」
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