輪廻ノ空-新選組異聞-
ドキッと心臓が跳ねた。

「でも、私はそうなっても後悔しないように、日々魂を込めて生きています。今夜死んでも、明日死んでも悔いは無い」

「っ…やっ」

わたしは思わず前に座す沖田さんの肩にしがみついてた。

「ダメです!死ぬつもりで生きてちゃダメです!その覚悟は大切な近藤局長や土方副長のためにも生き抜く覚悟にして下さい!」

沖田さんから「死んでもいい」なんて言葉は聞きたくない。

「蘭丸…」

驚いたような沖田さんの声。
続いたのは、ふふっ、と笑みこぼす声。

「そうでした。私にはあなたがいるから、今死んじまったら、気掛かりで成仏できないな」

その言葉に頬が熱くなった。

「そ、そうですよ!私のためにも生き抜いて下さい。わたし、沖田さんの事大好きなんですから。大切なんですから」

「蘭丸…」

ハッキリ、
くっきり、
真っ赤に赤面する沖田さんの顔。

「ありがとう」

照れたような微笑。

はっ、思わず本心が出ちゃった…、と気付いたわたしまで赤面。

「近藤局長も好きです。お父さんみたい。懐が大きくて…」

ついでみたいに付け足したけど…。
実際…懐は大きい。
父さんも…生意気なわたしが口悪く反抗しても本気で怒ったり、ましてや体罰なんて事もなかった。本当に間違った事には厳しかったけど…だからこそ、甘えが出て余計に反抗してみたり…。

近藤局長も、芹沢局長とか、その一派が無茶をしても正論で諭す以外は「彼らなりに義もあるから」と無闇に責めることは無かった。だから人望も人一倍。芹沢さんは…残念だけど…会津公が不要だと判断しても…仕方ない人…。

「沖田さん。今夜…」

わたしは味方です、とキッパリ告げた。
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