輪廻ノ空-新選組異聞-

日常

除夜の鐘。
遮るものがないせいか、
空気が澄んでるせいか、
雑音が無いせいか…
多分その全部のおかげで
沢山あるお寺から木霊する
除夜の鐘が荘厳に響き渡る京の大晦日の夜。

「つか…れた…っ」

私はバッタリと囲炉裏の横に倒れ込んだ。

「このまま寝たい…。でも初めて京で過ごす年末年始だしな…」

襲ってくる眠気に抗って、よっこらしょと起き上がる。

「でも、ちょっと…座って休憩」

火箸で囲炉裏の炭をグリグリ、グリグリ。
炭を突いたり、転がしたり…。

すぅ、と瞼が落ちてくる。

「蘭丸、終わりましたか?」

沖田さんの声に、ハッとして姿勢を正す。

あーあ…、と沖田さんは苦笑交じりに溜息をこぼす。
「手伝うと言ったのに、ひとりで無理をするから」
疲れ切った顔をしてますね、と私の前髪をくしゃ、と混ぜた。
「手際の悪い人が厨(くりや)に立っても邪魔なだけです」

言うようになりましたね、と沖田さんは笑い出した。
料理を学び始めた時は、八木さんとこのお女中さんに叱られまくって、手際の悪さと来たら酷かったのに。と続いた言葉に、ぐっと詰まる。

「竃に火も熾せませんでしたよね?」
「だって!私の所は自動なんですよ、自動!ちょっとつまみを捻れば、ボタンを押したら、火が点くんですっ」

ハイハイ、と沖田さんは何度も聞かされた言葉に頷きながら、今度は私の頭をポンポンと叩いた。
「あなたの努力には、兜を脱ぎます」
頑張りましたね、と厨の台に並べられたお節料理とお雑煮の準備に視線を向けてから、私に笑顔を向けてくれた。

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