輪廻ノ空-新選組異聞-
ひやり。
おでこに冷たい布の感触。
「ん……っ」
「気がつきましたか?」
薄く眼を開いて、覗き込む顔を視線が絡んだ。
「…………誰」
見覚えあるけど…。
えっと……。
サカヤキ…。
「あっ!」
そうだ、わたしっ!バクマツにいるみたいなんだ。
このサカヤキの人は沖田総司。
暢気に気絶してる場合じゃないよ!
跳ね起きた。
「沖田さん!」
聞きたい事が沢山ある。
向き直って正座をした。
「は、袴!」
思い切り顔を逸らせて強く言い放つ沖田さんの姿に首を傾いだ。
「え?」
「寝かせる時に…苦しかろうと脱がせてしまいました…から、その……」
慌てて自分の膝に視線を落とす。
「きゃっ」
太ももから素肌が露になっている。
「私は土方さんを呼んできますから、その間に袴を着けておいて下さい」
沖田さんは早口に言いながら立ち上がると、そそくさと出ていった。
わたしは跳ね起きた時に、おでこから落ちた濡れた手拭いを拾い上げると桶に戻して溜息をついた。夢じゃない。本当にいるんだ、バクマツに…。