輪廻ノ空-新選組異聞-
「ちょっ、止め止め!降参降参やがな!」
伊木さんはこの稽古何度目か忘れるぐらいの回数の転倒をして、倒れたまま叫んだ。
「鬼やな!!」
男前で通る、くっきりした顔立ちを歪めてゼーゼー言ってるよ。
「沖田さん程じゃないと思いますが?」
屈んで、面金越しに伊木さんの顔を覗き込む。
「ほな小鬼」
「あ~、なんか可愛い響きですね、ありがとう!」
「阿呆か、褒めとらん。デカイなりして可愛いもんか」
ブツブツ言いながら立ち上がった。
「もう仕舞いや!ええな」
「まぁ、いいでしょう。取り敢えず堪能はした」
「また強うなったやろ。もう勘弁や」
辟易したように言うと、竹刀を戻して面を外し、わたしにも促した。
「ほなら、今度は俺に付き合うて貰うで!」
「仕方ないなぁ。ではお礼も兼ねて付き合いますよ」
何をすりゃあいいんです、と聞きながら防具を片付けて。乱れた髪を一度ほどいて結い直す。
「ん?何を見てるんですか」
注がれる視線に気付いて聞くと、伊木さんはため息だ。
「鬢付(びんつけ)油使わんからか?気軽にほどいて結うんは」
罪作りな項(うなじ)やなぁと。
「はぁっ!?」
私は思わず声を上げた。
「気持ち悪っ」
「あとせめて三、四寸小柄やったら、男かてかまへん、むしゃぶりつきたくなる風情やった」
「馬鹿!下坂した時に恋仲のお千代ちゃんに言い付けますよっ」
私は言って、思い切り伊木さんのおでこに「でこパッチン」をしてやった。
「いだぁっ」
一瞬で真っ赤になったおでこを押さえて、伊木さんが掴み掛かってきた。
「うわっ!こ、今度は柔術の稽古ですか!八郎さんこそ元日から熱心ですね!」
「ちゃうわい!」
床に倒れて大笑いしながらの取っ組み合いになった。
伊木さんはこの稽古何度目か忘れるぐらいの回数の転倒をして、倒れたまま叫んだ。
「鬼やな!!」
男前で通る、くっきりした顔立ちを歪めてゼーゼー言ってるよ。
「沖田さん程じゃないと思いますが?」
屈んで、面金越しに伊木さんの顔を覗き込む。
「ほな小鬼」
「あ~、なんか可愛い響きですね、ありがとう!」
「阿呆か、褒めとらん。デカイなりして可愛いもんか」
ブツブツ言いながら立ち上がった。
「もう仕舞いや!ええな」
「まぁ、いいでしょう。取り敢えず堪能はした」
「また強うなったやろ。もう勘弁や」
辟易したように言うと、竹刀を戻して面を外し、わたしにも促した。
「ほなら、今度は俺に付き合うて貰うで!」
「仕方ないなぁ。ではお礼も兼ねて付き合いますよ」
何をすりゃあいいんです、と聞きながら防具を片付けて。乱れた髪を一度ほどいて結い直す。
「ん?何を見てるんですか」
注がれる視線に気付いて聞くと、伊木さんはため息だ。
「鬢付(びんつけ)油使わんからか?気軽にほどいて結うんは」
罪作りな項(うなじ)やなぁと。
「はぁっ!?」
私は思わず声を上げた。
「気持ち悪っ」
「あとせめて三、四寸小柄やったら、男かてかまへん、むしゃぶりつきたくなる風情やった」
「馬鹿!下坂した時に恋仲のお千代ちゃんに言い付けますよっ」
私は言って、思い切り伊木さんのおでこに「でこパッチン」をしてやった。
「いだぁっ」
一瞬で真っ赤になったおでこを押さえて、伊木さんが掴み掛かってきた。
「うわっ!こ、今度は柔術の稽古ですか!八郎さんこそ元日から熱心ですね!」
「ちゃうわい!」
床に倒れて大笑いしながらの取っ組み合いになった。