輪廻ノ空-新選組異聞-
「言われてみると…」

すげぇ、と。

こんな男所帯も男所帯。半端ねぇ中で男になりきってんだからなぁ、と続く言葉。

こんなに男子として成功してた事は嬉しいけど…やはりここは…

「む、胸は晒を巻いているから無いんですよ…!」

「なるほどなるほど!んじゃあ、本当はあるんだな?」

「あ、あります!!!!」

つい、ムキになってしまう。

「確かにあったな、しっかりと。豊かとはいかんが…」

なぁ、総司。と土方さん。

「そ、そうですね」

がぁ〜〜んっ。
「そうですね」って、豊かじゃないって沖田さんまで思ってるんだ…!!

「なにぃ!土方さんは当然として、総司!お前まで蘭の字の裸体を見たのか!?」

そんな私をそっちのけで、永倉さんが驚愕したように叫ぶ。

「不可抗力ですっっっ!!!」
「不可抗力!!!」

というわたしと沖田さんの叫びが重なる。

「俺は当然たぁ、どういう事だ」

土方さんまで混ぜっかえして。

「どんなおなごだって、抱いて品定めする人じゃねぇか。蘭の裸のひとつやふたつ見てるだろ」

原田さんの言葉。

ひ、土方さんって、そんなに女に見境無いの!?

「こんな色気のねぇおなごは抱かねぇ」

ブチッ、と切れた音を聞いた気がする。

「もうっ!!!失礼千万だっ!!!」

わたしは徳利ではなく、まだ未開封だった小振りな酒樽の蓋を拳で叩き割って持ち上げた。

「全員そこに並べっ!!」

た、多分お酒のせいだよ、とどこか奥の冷静な自分は言ってるんだけど…もう止まらなくて。

「空になるまで呑んで貰うからな!お酒のわんこそばだっ!!!」

皆が「?」となるのも無視して、桝で猪口を次々充たして呑め呑めと脅した。自分もヤケになって呑んでたら……沖田さんの制止の言葉も遠くになって……。

ぱたり…と、冷たい畳の上に顔をつけて倒れた感触までは覚えてて…。
あとは遠くの声。
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