輪廻ノ空-新選組異聞-
「蘭」

「うわっ」

出た瞬間、土方さんと鉢合わせた。あやうく顔と顔がぶつかりそうだったよ…!!というか…何か触れた…?

見たら…土方さんは自分の唇を指で擦ってて。

「ま、まさか…!?」

わたしも慌てて唇に手をやる。

「急に出てきたおめぇが悪い」

と言うか、もう具合は良いのか?と続けた土方さんの言葉を遮る。

「は、初めてなのに…こんなの…」

「今のは初めてじゃねぇだろう。初めてなら昨夜だな」

「は!?」

昨夜…何がっ!?

「酔って昏睡状態のおめぇに水を大量に飲ませる必要があったからな」

「口移し…?」

恐る恐る聞いたわたしに、土方さんはあっさり頷いた。

「しかし、快復したようだな」

窺う視線に、頭痛を思い出して頭を押さえた。

「あ、あの。すみません!私は巡察にも出られず…士道不覚悟です、よね?」

「いや、昨夜のは連帯責任だ。呑めねぇ、おめぇに全員で飲ませる状況を作ったのだからな」

わたしは風邪という事で病欠になっていると告げられた。

「幸い他の連中には漏れてねぇからな。だが、けじめをつける為、昨夜の全員、一月の外泊禁止だ」

「そうですか…」

どちらにしろ迷惑をかけたのには変わりがない。わたしは深々と頭を下げた。

「本当にすみませんでした」

「今後は気を付けて貰わねぇとな。俺もいらぬ事を言ってしまったが…」

命に別状が無くて良かった、と続けた土方さんの唇に視線が行ってしまう。

覚えてないけど…かすめたどころじゃない口付けで水を……

カァっと頬が熱くなる。

「熱か…?」

とにかく布団で休んでおくように、と土方さんは私の体を反転させて室内へと押しやった。
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