輪廻ノ空-新選組異聞-
「お主は新選組の主力を占める試衛館一党の中にあって、隙だらけだ。近付きやすいと踏んだのだろう」

うっ…。隙だらけ、か…。
もっと気を引き締めないと。

「で、行動を全て見張っていたが…衆道の気があるらしく、お主はその点でも気を付けねばならぬ」

「し、衆道!?」

恋人いるのに…と呟いた私に齋藤さんは首を振った。

「好色な男の中には、両刀のものもいる。至極当然にな」

ショック…!!

「昨日は道場でお主が髪を結い直しておる時に項に見蕩れていた」

あ…、と納得がいった。様子が変だったよ、確かに。

にしても…

「ストーカーじゃなかったんだ、齋藤先生!」

着替えも完了させ、ホッとして思わず漏らしてた。

「すとおかあ…?」

ハテナ顔の齋藤さんに慌てて手を振った。

「すみません!こちらの独り言!えーと、方言です!」

「お主は時折、不思議な言の葉を使う…」

と言われて、どうフォローしようかと思っている所に、少し急ぎ足の足音。影がさして、開いた障子の向こうには沖田さんが。

「良かった、快復したんですね!」

開口一番の言葉で、沖田さんがどんなに心配してくれていたかが分かって、ギュッと胸が締め付けられた。

「ご迷惑をお掛けしてすみませんでした。頭痛は残っていますが、お水のお陰か、お酒は残ってません」

告げたら、沖田さんは一瞬動きを止めて、それから真っ赤になった。
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