輪廻ノ空-新選組異聞-
「…?」

どうしたのだろうって思ったけど、すぐに気付いた。

水、を…土方さんに口移しされたところを見られたんだよ、きっと!!

つられて頬が熱くなる。

「ごほん」

と、齋藤さんの咳払い。

「両人とも初心なものだな」

「放っておいて下さい!」「放っておいて下さい!」

沖田さんと声が重なった。
思わず苦笑を見交わす。

「あ、巡察お疲れ様でした」

ザワザワと人の気配が増して、一番隊の皆がこの室に戻ってきているのだと気付いて、沖田さんに一礼を送った。

「そうだ、須藤。白湯をと思って持って来たのだ。喉が渇いておるだろう」

齋藤さんが湯飲みを差し出してくれて。わたしは素直に受け取った。本当に喉が渇いていて。

薬罐から注がれた白湯を一気に飲み干す。美味しかった。

と、戻った隊士達が障子を開けてどんどんと入ってくる。その先頭にいたのが、伊木さんだった。

「蘭!具合はどうだ!」

勢い良く言ったんだけど、齋藤さんと沖田さんの姿を見て、ちょっと驚いたように居住まいを正した。

「さて、私は退散するとしよう」

齋藤さんはわたしに目配せをすると、薬罐と湯飲みは置いていくからと付け加えて立ち上がった。そして、伊木さんには目もくれず室を出ていった。
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