輪廻ノ空-新選組異聞-
「おまえには贔屓が多いな」

贔屓…。
その言葉には何だかムッとした。

「贔屓など誰もしませんよ。具合が悪くなったのが昨夜の我々の宴での事でしたからね」

様子を窺い、看病するのは当然です、と沖田さんは続けた。

「あなたが隊務で負傷すれば、こうして看病しますよ」

更に付け加えられた言葉に、伊木さんはブンブンと頭を振って。

「おおきにおおきに!そのお気持ちだけで!」

まぁ…蘭が看てくれるんやったら頼むけどなぁ、と言った伊木さん。

「嫌です!!」

語尾が消えないうちの拒否になる程嫌だよ。

仲良くしてくれて優しかったし、嫌いじゃなかったけど…

カンチョウの事とか、りょ、りょ、両刀使いだっていう、下心の事は私には許せない。
新選組の敵!
女の敵!

「ぷっ」

沖田さんが吹き出した。

「蘭丸。仲が良いのに、その断り方では伊木さんが気の毒です」

「だ、だと言われても…やらしい下心がありそうで」

沖田さんのを断ったのも失礼ですし、とブツブツ反論を。

「ひどいでぇ、俺は衆道やない」

武田はんやあるまいし、と言ったのを、私は聞き逃さなかった!

「武田さん!?」

「あの人はあからさまに衆道。男色愛好家やで」

「はぁっ!?」

確認するように沖田さんを見る。

沖田さんはため息混じりに頷いた。

「何ですか!!こっちに来てから衆道衆道って聞き過ぎなぐらい聞くんですが」

そんなに普通の事なのですか、と聞いたら…

「武家のたしなみや言うな」

………そうなんだ…!!

色んな事実が一気に明らかになって…

わたしはぱたりと布団に倒れ込んだ。

頭…痛い。
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