輪廻ノ空-新選組異聞-
「あ、サンナン総長」

一番隊の室から出て廊下を行き始めたところで、副長室から出てきた山南さんの姿を見つけて駆け寄った。

「先日はお菓子をご馳走様でした!」

「喜んで貰えたなら良かった」

「甘いものを食べながらの梅見、来年もしたいですね」

わたしの言葉に、山南さんは「もう来年の話か」と笑って。

「あ、そうでした!まだ桜の季節もありますしね!」

梅よりボリュームがあって華やかな桜が満開になったら綺麗だろう、と今から楽しみで仕方がない。

「都の桜は見事だった。昨年初めて見たがね、雅やかで素晴らしい風情だ。楽しみにしておくといい」

「はい!」

そうだ、とサンナンさんは急に話題を変えた。

「副長が君を見掛けたら室に来るようにと言っていたのだ」

「左様でしたか!」

では急いで行って来ます、とわたしは山南さんに一礼して副長室に向かった。

なんだろう?
何かヘマしたかな…。みんなが恐れる副長。わたしはそこまでビビってはいないけど、やっぱり怒る時、皆を集めての下知の時なんかは凄い迫力。

だから…
怒られるのは勘弁して欲しいな。

と、呟きながら副長室の前に。

「須藤です!失礼いたします」

膝をついて告げ、障子を開く。

「来たか。いつまで立ち話かと思ったぜ」

と文句を言いながらも、別に怒ってはいない様子。

「ご用件は?」

「特殊な任務を頼みたくてな」

「特殊な任務?」

「おめぇにしか出来ねぇ」

なんと!
まさかそんな大切そうな任務がわたしに!!

思わず居住まいを正した。
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