輪廻ノ空-新選組異聞-
「……女装……っ」

耳を疑いたいような言葉。

「それで楽しそうなんですね…!」

思いっきり不機嫌になって、土方さんを睨む。

「堂々と皆の前で女になれるんだ。嬉しいだろ」

「馬鹿ですか!」

「ば…、馬鹿だと!?」

「じゃあ、阿呆!」

もう、と私は自分の膝を拳で叩く。

「おなごの格好などしても、お上品な所作が出来ません!」

小声で叫ぶ。

「言っておきますが、わたしのいた所では、おなごも洋風の袴ってんですか、そういうのを履いたりするんですよ。こんなこの時代みたいに着物を着てる人なんて希少なんです」

だから、男でいるよりボロが出ます!と、更に小声で叫ぶ。

「小声でも叫ぶな」

「い、いででで…」

ほっぺたを抓られて思わず悲鳴が出る。
気軽に触るな!と言いたい。

「おなごの色気の欠片もねぇお前だ、女装などきつかろうが、そこが見物なんだろ」

「ひでぇ!」

「その言葉遣いだ!おめぇは、どこのヤクザだ」

「土方副長がそうさせたんだろ!」

だんだん余計に言葉が乱れるじゃないか!

「だいたい任務の話じゃないんですか!何ですかもう、楽しいやら、見物やら!」

と文句をぶちまける。

「あ、すまねぇ、任務の話だ。つい、逸れた。売り言葉に買い言葉だ」

サラッと、しれっと!
余計にムカツク!
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