輪廻ノ空-新選組異聞-
自分の怒りを落ち着けながら、続く土方さんの言葉を待った。




「…………」

思わず思考が停止。

そして、脳内に言葉が染み渡って……。

「はぁっ!?」

有り得ない…。

「何を考えてらっしゃるんですかっ!!」

ご存知じゃないとは言わせませんよ!と続けようとした唇を、手で塞がれた。

「んーっ、んーっ!」

「黙れ!馬鹿!」

っち、と舌打が室内に響いて。

「行くぞ、付いてこい!」

土方さんは言うなり私から手を離して立ち上がると、床の間の刀架けから大小の刀を取って腰にさし、サッサと室を出て行く。

話も途中だし、何だ、この急な展開は!

濡れ縁をバタバタと追いかけていく視線の先で、土方さんは山南さんを呼び出して同行を命じたみたい。山南さんの「今からかい?」というオドロキの声がしっかり聞こえてくるよ。

「総司!」

と、沖田さんまで呼び出す始末で…。

いったいどういう騒ぎさ。
聞いた言葉が本当なら…相当覚悟を決めないといけない任務だけど……。

伊木さんと夫婦のふりして旅籠に潜入泊まり込みなんて……。

大きな溜息を何度ついても、不安は大きくなるばかり。

「溜息なんかついてねぇで、サッサとついて来い」

土方さんはサッサと屯所を出て、坊城通りを南へと歩き始めた。
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