輪廻ノ空-新選組異聞-
「どこでその胴着を手に入れた。
 そんなの理心流じゃ支給してねぇぞ」

「それより、わしはこんな愛らしい
 門弟は指導した覚えがないな」

「申し開きをしてみろ」

私は返された胴着を着るために、袴の帯をゆるめてもくもくと着用の作業中だ。

「答えねぇか!」

「トシさん、相手はおなごだ。
 もっと穏やかに」

「おなごか知らねぇが、
 でかい図体して、
 加減なんていらねぇだろ」

たしかに、167センチの私は、クラスでも高い部類だけど、女の子をつかまえて失礼でしょ、その言い方!

「天然理心流の中極位目録です、
 わたし」

「はぁ!?」

全員が声を揃えた。

「この時代でも通用するのかどうか、
 知りませんけど」

というより、今何年ですか?と続けた。

…………。

…………。

…………。

沈黙がおりた。

「訳が分からねぇ」

トシさんが漏らした。

「だから言ったでしょう。
 私だって驚いたんです。
 壬生寺で隠れ鬼をしていたら…
 突然この人……」

沖田さんは一度深呼吸をした。

「本堂の階に降ってきたんですよ」

訳がわかりません、と継いで口を閉じた。

わたしだって訳わからないんだから!
とりあえず、先にさっきの質問に答えてほしい。

「で、今は何年なんですか?
 幕府はまだ倒れてないんですよね?」

「てっ、てめぇっ!
 恐れ多くもお上をなんて事言いやがる!」

「今は文久三年ですよ。
 文久三年九月です」

ブンキュー3年。

字は忘れたけど…日本史の授業で音読させられた時に出てきた。

「ど、どうやったら…
 自分の時代に帰れるんだろ…」

本当にタイムスリップって言うの?

しちゃったんだ、わたし。





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