輪廻ノ空-新選組異聞-

役儀

土方さんと山南さんに連れられて来たのは島原だった。

沖田さんと顔を見合わせる。

「こんな明るいうちから…」

何の意味があるのか…。

「早くにすまないが、明里(あけさと)を」

と、山南さんが告げて。
お茶屋の人は嫌な顔ひとつせず、頷くと出ていった。山南さんの人徳、なんだろうな。

すぐに諾の返事と共に戻ってきた茶屋の人と揚屋へと移動する。


こぢんまりした室に通されて、暫くしたら綺麗な綺麗な遊女が入ってきた。

「明里どす。お急ぎのご用件やとか。お待たせしてしもて…」

「いや、このような刻限に無理を通した我らが悪いのだ。すまねぇな」

山南さんより先に土方さんが頭を下げた。

「そないな、遊女如きに勿体のうおす」

明里さんは慌てて土方さんに頭を上げるよう促して。

「この明里にお役に立てることがおありやとか」

「左様なのだ」

今度は山南さんが答えた。
そして一番出入口に近い端っこで様子を見ていたわたしを手招いた。

「須藤くん、この女性は私の大切な人でな。天神の明里だ」

わたしが山南さんの隣に座ると、そう言って紹介された。

「明里、これは我が隊、一番隊の須藤蘭丸だ」

「明里どす。よろしゅうおたの申します」

深々一礼。

「須藤蘭丸です。宜しくお願い致します」

わたしも一礼。

「美童でおいやすなぁ」

「ビドー?」

明里さんの言葉がわからなくて、思わず聞き返した。

「美しい少年、と言うことだ」

はぁ…。

「此度、こいつに女装をさせ、もうひとりの隊士と夫婦に仕立てて任務につかせる事になったのだ」

そこでおなごの装束やら、道具、仕草などをそなたに仕込んで貰いたいのだ、と土方さんは続けた。

「一向にかまいまへんけど…。わざわざうちを頼らはらんでも…隊内でご準備出来しまへんのどすか?」

「女装は女装でも、こやつは本当におなごでな」

「まぁ」

と明里さんは目を丸く。

「なっ!?」

て私も目を丸く。

そんな簡単に!?
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