輪廻ノ空-新選組異聞-
「必ずお役に立ってみせます!やらせて下さい!」

怖い。
でもそれ以上に、沖田さんや土方さん、皆がわたしを信頼し、認めてくれている事にこたえたかった。

わたしはハッキリと告げて、土方さんに一礼を送って、沖田さんにも決意を込めて視線を向けた。

「……」

沖田さんは深々と頷いてくれて。でも上げられた顔は何とも言えないような微笑で。

多分…心配で仕方ないんだ。
剣術の腕前は、こっちにきてからメキメキ上達して。でも実戦にはまだ心許ない。

更に、この時代にきて、漸く勝手が分かってきたところで、言葉なんかは時々単語がまったくわからない。

そんなわたしを知り尽くしているから…。

「強く、なりましたね」

そんな微笑の沖田さんからの言葉。

「つききりで面倒見て、育ててやった愛娘が巣立つようで寂しいのだろう」

土方さんがそんな沖田さんに気付いてニヤニヤして言った。

「愛娘!?」

娘!酷い!

「愛娘だなんて思っていません!」

わたしの反発しての反問に続いて沖田さんも珍しく大きな声。

「色々複雑なだけに…己の気持ちが何なのかもわかりません」

ボソボソと付け加えたけど…。続いた声は素に戻って。

「心配なのは確かです。相方となるのは衆道でもあるのです…」

まあ、と明里さんが声を漏らした。

「難儀な事どすな」

わたしはそこでハッとした。

明里さんは、わたしが初めて得た同性の助っ人…!!

えもいわれぬ安堵感が広がる。

「は、初めてのおなごの仲間です」

なんてありがたい、と続けたら明里さんは目を丸くして。

「ほんまどすか?そないな、まぁ…よくご無事で。お気張りやしたのどすな」

あ…なんか…
労われたら…泣きそうだよ。

わたしは慌てて首を振った。

「自ら望んで新選組にいるのです!ですから、それだけでありがたく思っています」

「男前どすな」

「…!」

嬉しい。素直に。

「明里さんに会えて、益々力が湧きました!わたし、頑張ります!」

「よし」

と土方さん。
山南さんもしっかりと頷いてくれた。

生半可な気持ちではなく、完璧を目指して…役目を務めたい。心に固く誓った。
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